【引退記念】追憶の赤胴車で行く阪神武庫川線の小さな旅 2019/11/10
阪神電車といえば、大阪梅田の地下ホームから出発して尼崎や西宮などを経由して神戸三宮、神戸高速鉄道、山陽電車に直通して姫路まで至るオレンジと青の電車…という認識をされる方が一番多いのではないでしょうか?
近年では難波へ至る路線も開通し、奈良と神戸を向かう列車も運転されています。
阪神電車を日ごろから利用していて親しみを持たれている方、阪神電車に乗ってみたい!と思われている方はもちろん、阪神電車とはなんぞやと思われている方も最後まで読んでいただければ幸いです。
目次
赤胴車・青胴車とは?
阪神電車では優等列車と普通列車で使用する車両が大きく違います。
優等種別に使用される赤胴車
直通特急、特急、急行で使用される車両はオレンジを基調とした6両編成の車両です。
車内はロングシートを基本としていますが、一部転換クロスシートを設置している車両もあり、都市圏の短距離の利用から長距離の利用まで様々な利用に対して対応できる車両になっています。
そんな優等種別に使用される車両ですが、かつては上半分がクリーム、下半分がオレンジパーミリオンを配した写真のような塗装になっていました。
この塗装を「赤胴車」とファンの間で呼ばれるようになりました。この塗装1995年まで製造された8000系まで採用され続けました。
しかし、1996年に落成した9000系は赤とグレーの帯というこれまでの阪神の車両とは大きく変わった塗装で登場しました。
また、2001年投入の9300系では、8000系以前の車両と同じツートンカラーながらも配色が変更され、プレストオレンジ(上半分)、シルキーベージュ(下半分)という赤胴車とは上下逆の塗装に変更されました。
さらに2006年に落成した1000系はオレンジを基調とした塗装ですが、塗り分けを大きく変えた塗装となりました。この配色には近鉄奈良線・難波線に直通可能な車両という意味も含まれており、前述の9000系も近鉄直通対応工事を施工した際に同じ塗色に変更されています。
2001年から8000系のリニューアル工事を開始、8000系リニューアル車は9300系に準じた塗装に変更されたため、本線上から赤胴車が消滅しました。
高加速度で駆け抜ける青胴車
阪神では駅間の距離が短いので高速で走る優等列車から逃げ切るためには普通列車に高加減速性能が求められます。そこで高加減速性能を持った普通列車専用車両が使用されています。これらの車両は「ジェットカー」と呼ばれ、『従来の車両をプロペラ機にたとえるならこの車両はジェット機に匹敵するぐらいの加速・減速の良さである』という比喩から名付けられました。
「ジェットカー」は青を基調とした塗装が採用されており5500系までの車両は上半分がクリーム、下半分は青という塗分けでした。このことから赤胴車に対しての表現として「青胴車」とも呼ばれました。
なお、5500系以降は赤胴車と同様に塗分けが変更されています。
最後まで「赤胴車」が残った武庫川線
阪神大阪梅田駅から急行で13分。武庫川を渡る鉄橋の上に駅が設置されている武庫川駅に到着します。
神戸寄りにあるスロープを降りると改札口へ。二か所あるうちの片方は不正乗車対策用の武庫川線用の中間改札です。
改札を抜けると「赤胴車」の武庫川線用車両がホームに停車していました。
武庫川線で使用されているのは2015年に8000系のリニューアル工事が完了したことで本線上から消滅した赤胴車。しかし、武庫川線で使用されるのはかつて本線上で特急や急行として活躍し、武庫川線に転用された7890形と7861形で運転されていました。
しかし、本線上で普通列車用のジェットカーとして活躍していた5500系がワンマン改造の上2020年6月3日より運転を開始、7890形と7861形は老朽化により引退することになりました。
私は約半年前に訪れていましたので、使用されていたのは7890形と7861形。私が乗車したのは7866-7966編成でした。
武庫川線は武庫川から武庫川団地前の約1.7㎞を約5分かけて走行します。日中は20分間隔で全列車が2両編成のワンマン運転です。
乗車した7866号車は昭和43年の製造。約52年間活躍していたというわけです。50年を超える鉄道車両はかなり貴重な存在です。
終点の武庫川団地前までたった5分の旅です。
武庫川駅の次の東鳴尾駅は武庫川線で唯一交換設備を有する駅。朝ラッシュ時などはここで交換を行います。東鳴尾駅と次の洲先駅の間はたったの400m。これは阪神電車の駅間距離の中で一番短いそうです。
そして終点の武庫川団地前駅。ここは団地の中にあるこじんまりとした駅です。大手私鉄の駅というよりかは地方私鉄の駅といった雰囲気の方が強い気がします。
武庫川団地前駅から武庫川駅の走行音をYouTubeにて公開しております。
最後は5001形「ジェットカー」
7890形・7861形引退に伴い、阪神の伝統的な「赤胴車」「青胴車」塗装は本線で普通列車として活躍する5001形「ジェットカー」の青胴車塗装のみとなりました。
しかし、この5001形も後継の5700系の登場に伴い廃車が進んでいます。乗るも撮るも今のうちといったところです。
いかがでしたでしょうか。
鉄道会社の「顔」となるのはやはり車両。その中でも塗装は格別なものです。新線開業の際に一新されたり、何かの記念で変更されたり…会社のイメージとして定着することになるので、重要なものといえます。
武庫川線では現在5500系が2両編成に短縮されて活躍していますし、本線では5001形が最後の活躍をしています。この記事が阪神電車について知る良い機会になればと思います。