鉄道ファンが行くお出かけ雑記

鉄道ファンが旅行の魅力を紹介します!

にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村 鉄道ブログへ
ブログランキング・にほんブログ村へ

洗面台の横にあるタンツボって何だろう

※本文中の情報は取材日のものです。できるだけ最新の情報に更新するよう努めてまいりますが、お出かけの際には各自で最新情報をお調べいただきますようお願い申し上げます。

新規感染者数が減少し始めた新型コロナウイルス。先日39県で緊急事態宣言が解除されることが決定しました。

今後は再び感染が拡大することがないように気を付けて生活しなければなりません。新型コロナウイルスと上手く付き合いながら生活していくことが必要になります。

 

さて、明治期の日本では肺結核が流行しており、明治末年の統計によれば肺結核による死者は過去十年間の平均で7万3000人という数字になっており、大正7年(1918年)には結核による死者が人口10万人当たり257人に上ったとされました。翌19年に危機感を募らせた日本政府は結核予防法を制定しました。

「学校、病院、製造所または鉄道、電車、船舶、自動車、馬車などの発着待合所、劇場、寄席、活動写真館、旅店、下宿屋、理髪店、湯屋、その他地方長官の指定したる多衆の集合する場所または客の来集を目的とする場所には液体を入れた適当個数の唾壺(ダコ)を配置するべし」

大人数が集まる場所では結核菌に感染するリスクが高まるので予防策としてタンツボを設置するように義務付け、タンツボ以外でタンやつばをまき散らすことを禁じました。

結核予防法を受けて戦前の鉄道車両の通路の床には穴が並び、その下にタンツボを設けていた客車もありました。

また、洗面所にもタンツボは設置されました。その当時の一般家庭では水は水栓をひねると無尽蔵に流れ出るものではなく、井戸や水壺からことがあるたびに洗面器にためて利用するためだったので、その清水が入っている洗面器に口で漱いだものを吐き出すことはできず、洗面器以外に不浄なものを吐き出すという日本国民の習慣を列車内に導入したのかもしれません。

 

第二次世界大戦中の1944年に抗生物質のストレブトマイシンが発明され、結核は治る病気になりました。それでも51年に制定された同名の結核予防法でもたんつぼの概念は引き継がれ、戦後の列車内にも引き継がれました。

戦後は主に洗面台の脇に設置されました。それは当時、貴重な水を洗面器にためて洗顔などに利用していたので、口でゆすいだ水を洗面器に吐き出すためにもタンツボを使っていました。

 

f:id:miyakoji-cityliner:20200430003936j:plain

583系の洗面台にもタンツボがあった

写真は583系の洗面台。1960年代に登場した車両ですが、その車両の洗面台にもしっかりとタンツボの存在が確認できます。洗面器の左側にある白いところがそれです。後年に蓋されました。この頃になると近郊型車両など比較的短距離利用がメインの車両には洗面台そのものがなく、トイレの中にある簡易的なものだけだったためか設置されませんでした。しかし、長距離利用の際には洗顔をする方が多いためか、長距離を主に走行する急行形や特急形の車両の洗面台にはタンツボが引き続き設置されました。

 

miyakoji-cityliner.hatenablog.com

 

近年、製造されている特急形車両の洗面台にはタンツボが設置おらず、タンツボが洗面台にある車両は現在ほとんど存在していません。現在、団体臨時列車用の車両か博物館に保存されている車両ぐらいですが、定期列車に使用される車両のなかでタンツボを装備した車両僅か2両、石川県の能登半島を縦断するJR西日本 七尾線413系電車に連結されたクハ455形だけです。この車両は最後の現役急行形車両としても知られています。

f:id:miyakoji-cityliner:20200516184909j:plain

先頭車両がクハ455形

しかしながら、七尾線に新型車両の導入が予定されており引退も時間の問題です。この車両に乗車された際にはぜひタンツボを確認してみてください。

 

戦前に大流行した結核に対して考案されたのがタンツボ。結核予防法は2007年末に廃止されました。厚生労働省によると2018年の結核罹患率は人口10万人当たり12.3人となりました。

新型コロナウイルスに対してもワクチンや医薬品の開発と同時に感染リスクを減らすための何か工夫が今後必要となってきます。政府が発表した新しい生活様式に加えて私たちで何か取り組んでいくことが必要となるのかもしれません。

みやこ路のシティーライナーはにほんブログ村に参加しています

にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村 鉄道ブログへ
ブログランキング・にほんブログ村へ